鎌ケ谷市は千葉県の北西部に位置する街。そんな鎌ケ谷市で唯一のターミナル機能を持つのがこの新鎌ヶ谷駅です。県北部を代表する京成成田スカイアクセス線、北総鉄道線、新京成線、東武野田線の3路線が乗り入れ、隣接する柏や松戸、船橋はもちろん北総線で東京都心部へ直通が可能なことから、アクセス性能も非常に優れた街となっています。
駅周辺は大型商業施設はもちろん市役所も当駅すぐそばにあるなど、市の中心部となっていますが、駅の開業は1991年と意外とつい最近のこと。さらにその当時は新京成線、東武野田線の駅はありませんでした。両線とも歴史ある路線で、古くからこの地に線路はあったはずですが。。。一体なぜ元来駅が建設されず、なぜ近年になって駅が開業されることになったのか。駅前と周辺の様子とともに、そのルーツを辿っていきたいと思います。
もくじ
4路線が集う鉄道結節点の駅構内を見る
それぞれの路線のホームや駅構内を見ていきましょう。
北総線と成田スカイアクセス線は線路を共用しているので、駅ももちろん同じとなります。高架2面4線のホームを有し、終日を通して頻繁に緩急接続が行われています。また2022年11月26日からは一部のスカイライナーも停車するようになりました。
ホームには待合室もあるので、運行間隔が開く日中時間帯でも快適に過ごすことができますね。また改札フロアにも「こもれび」と名付けられた待合・交流スペースが設置されています。
新京成線は北総線と並行するように線路が敷かれ、高架線の階層も同一となっています。元々は地上駅だった初富駅〜北初富駅間の連続立体交差事業で高架化、2019年に新駅舎も完成しました。
ホームは1面2線構造で、北総線とは同じ京成グループ系列のためか、階下の1階フロアには乗り換え用の連絡改札が設けられています。
一方の東武野田線は、他の2線とは少し駅舎は離れますが、それでも徒歩1〜2分の距離。すべての路線において同じ階層に改札があるため、そこまでのストレスを感じることはないでしょう。
北総・新京成が東西方向に線路が敷かれているのに対し、東武線は唯一南北に伸びるため、線路は両線を高架下で交差するように敷かれています。
ホームは掘割の対面式2面2線構造で、急行列車も停車する当線の主要駅のひとつとなっています。
また北総・新京成線と東武線の乗換通路途中には、ちょっとした買い物に便利な商店が並びます。
新京成線の高架化が完了したものの、南側の旧線が敷かれていた箇所は完成から4年経った今でも通り抜けができず、駅への導線は北側のみとなります。バリケードの向こうも空き地の状態が続いていましたが、ようやく再開発計画の見通しが立った模様で、南北を通り抜ける自由通路とともに商業施設やマンションが建設される(※1)とのことです。
南北にロータリーを有す駅前の様子
こちらは東武線駅舎前にある北口交通広場。時計台と道路を挟んだすぐ先はアクロスモール(後述)が建ちます。広場内のロータリーはタクシー乗り場があるほか、ちばレインボーバスや船橋新京成バス、深夜急行バスのバス停が設置されています。
北総・新京成線の高架を挟んで南側にもロータリーがありますが、こちらはおもに企業や大学などの送迎バスが発着しているようで、普段は静かな雰囲気。千葉ニュータウンを中心に運行する生活バスちばにうはこちらの南口より発着します。
鎌ヶ谷の市街地を形成する、駅周辺の施設
北口交通広場を出てすぐ目の前にあるのが、ショッピングモール・アクロスモール新鎌ヶ谷。3階建ての構造と鳴っていますが、店舗フロアは1・2階に広がり、3階部分は駐車場とスポーツクラブとなっています。
一方のこちらは、アクロスモールの北総・新京成線の高架を挟んですぐの場所にあるイオン鎌ケ谷ショッピングセンター。駅から一番近い入口を入るとイオンならではの大きな食料品売場が広がりますが、ヤマダ電機やセリアをはじめとした専門店が多く入ります。
代表する商業施設はこの2店舗となりますが、その他にパチンコ店やビジネスホテルなども立ち並び、すぐ近くを通る県道8号線(船取県道)沿いに飲食店やユニクロの店舗もあります。
自然も多く残す梨の名産地と駅周辺のみどころ
鎌ケ谷市は地球の経度・東経140度線が通る場所としても知られており、北口交通広場の前や周辺でも、このように東経140度線の位置が記されています。東経140度線は、北はロシアから、南はオーストラリアまで縦断していますが、市街地のちょうど中央を通る都市はなんと鎌ケ谷市だけなのだそうです。
北口交通広場からさらに北に進むと見えてくる新鎌ふれあい公園。敷地内をぐるっと囲う遊歩道と広場、モダンな作りの遊具が印象的な公園で、子供たちも悠々と遊ぶことができるでしょう。周辺が住宅街となっているので、この規模の公園はあるとないでは街の雰囲気もガラッと変わります。このすぐ下を東武野田線が走るので、鉄道好きなお子さんも楽しめますね。
北総線を白井駅方面へ700メートルほど進み、北側に見えてくるのは鎌ケ谷市制記念公園。およそ4ヘクタールの敷地内には野球場やテニスコート、アスレチック風の遊具広場がある他、目玉となるのが入り口すぐにあるD51蒸気機関車と飛行機。この周りが交通公園となっており、バッテリーカー(1回100円)は子供たちにとても人気となっていました。
そして鎌ヶ谷といえば梨の名産地としても有名な場所。駅の北側、東武野田線六実駅寄りのエリアには広大な梨畑が広がります。直売所も多く点在するので、おいしい梨を求めるにはうってつけの場所です。
駅前に馬刺しが買える自販機!?
北総線・新京成線と東武線の駅舎の間にある一風変わった自動販売機。よーく見てみると、そこで売られているのはなんと馬刺し!!こちらは鎌ヶ谷市内に本社を構える食肉加工業者が展開しており、いつでも新鮮な馬刺しを冷凍の自動販売機で販売しています。実際に食べてみましたが、とても美味しくいただけました。種類によってはとても満足できる内容ですので、一度買ってみて損はないはず!?
本来あるはずのない駅は、なぜここまで発展したのか
さてここまで引き伸ばしてしまいましたが、新鎌ヶ谷駅の辿ってきた歴史をここで振り返ってみましょう。冒頭でもお伝えしたとおり、この新鎌ヶ谷駅は4路線が乗り入れる千葉県北西部を代表するターミナル駅のひとつですが、その開業は1991年と割と最近のことで、しかも当時は北総線の単独駅として設置され、新京成、東武はそれ以前からこの地点で交差していたにも関わらず、駅は設置されていませんでした。

北総線は京成高砂まで開通する前は、新京成線との直通運転を行っており、当初は北初富駅で連絡を行っていたので不便さはあまりなかったものの、新京成〜東武との乗換は初富駅〜鎌ヶ谷駅で行われており、その距離約1km。徒歩連絡にはかなり長い距離となります。かねてより地元住民からの新駅設置要望はなされていたそうですが、これといった動きは特になく時が流れ、北総線が京成高砂まで開通。これと同時に先述の通り当駅が開業。この時点ではまだ新京成線との直通運転が継続されていましたが、1年後の1992年に直通運転が終了。北総線には北初富駅がないため、乗換ができなくなることから新京成線にも新鎌ヶ谷駅を設置。直通廃止と引き換えに連絡駅となりました。
一方の東武野田線ですが、1989年に当駅付近に信号場を設置していましたが、駅として機能することはありませんでした。しかし地元住民や自治体が声を上げ、費用捻出を条件に、1999年念願叶って東武線の新鎌ヶ谷駅も開業へと結びつけました。その11年後の2010年には、成田スカイアクセス線が開業。アクセス特急が当駅の停車駅となり、現在の形に。
1980年代は計画すらなく、90年代に状況が一変。2000年代に一気に発展を遂げ、現在では周辺の主要都市や都心部への直結はおろか、空港アクセスまでを担うターミナルにまでのし上がった。まさに鎌ケ谷市が生んだ奇跡のターミナルと言えるでしょう。
まとめ
地域の住民や自治体の努力によって、郊外の単独駅から県を代表する主要ターミナルへと発展した奇跡の駅・新鎌ヶ谷駅。近年の新線開業によって生まれた接続駅としては、流山おおたかの森駅が挙げられますが、ここまで多くの路線が集まりながらも、開業年数がまだ若い駅は全国的にも珍しいケースと言えます。それ以外にも至近に市役所があったり、経度線の直上にあったりと、予定調和はなくともなるべくしてなったのかもしれませんね。また新京成線の高架化によって、工事が進められている南側も、今後どうなっていくのかも注目が高まります。
まだまだ発展の終わらない新鎌ヶ谷駅。これまでも、そしてこれからの奇跡をぜひ注目してみてください。