駅名で歴史がわかる!旧国名がつけられた駅・首都圏版

駅名で歴史がわかる!旧国名がつけられた駅・首都圏版

雑学
2024.02.25 2024.02.25
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時を遡ること約150年前。264年もの間続いた江戸幕府は、明治維新によってそれまでとは違う新たな時代を迎えました。当時日本の各地域は「藩」という領地で区切られ、いわば国としてそれぞれ統治されていましたが、1871(明治4)年の廃藩置県で藩による統治を廃止。新たに「府」と「県」という領域で区切られることになり、合併や県名変更なども交えながら今日にまで至っています。
県名はほとんどが新しいものに置き換えられましたが、実は駅名においては、かつての国名が使われているものがあるのをご存知でしょうか?
そんな旧国名が使われている駅を調査してみました。

東京周辺に多い 武蔵(むさし)

武蔵(むさし)は、東京近辺にも多く存在する名称。東京都西部を中心に、神奈川県や埼玉県にも及ぶ広範囲で使用されています。
そうした背景もあってか、数も多くJRだけにとどまらず、私鉄の単独駅でも用いられるケースもあります。

駅名駅名かな所在地路線名
武蔵小山駅むさしこやま東京都品川区東急目黒線
武蔵新田駅むさしにった東京都大田区東急多摩川線
武蔵境駅むさしさかい東京都武蔵野市JR中央線
武蔵小金井駅むさしこがねい東京都小金井市JR中央線
武蔵関駅むさしせき東京都練馬区西武新宿線
武蔵大和駅むさしやまと東京都東村山市西武多摩湖線
武蔵砂川駅むさしすながわ東京都立川市西武拝島線
武蔵引田駅むさしひきだ東京都あきる野市JR五日市線
武蔵増戸駅むさしますこ東京都あきる野市JR五日市線
武蔵五日市駅むさしいつかいち東京都あきる野市JR五日市線
武蔵小杉駅むさしこすぎ神奈川県川崎市中原区JR南武線
JR横須賀線
JR湘南新宿ライン
JR・相鉄直通線
東急東横線
東急目黒線
武蔵中原駅むさしなかはら神奈川県川崎市中原区JR南武線
武蔵新城駅むさししんじょう神奈川県川崎市中原区JR南武線
武蔵溝ノ口駅むさしみぞのくち神奈川県川崎市高津区JR南武線
武蔵白石駅むさししらいし神奈川県川崎市川崎区JR鶴見線
武蔵浦和駅むさしうらわ埼玉県浦和市JR埼京線
JR武蔵野線
武蔵高萩駅むさしたかはぎ埼玉県日高市JR川越線
武蔵嵐山駅むさしらんざん埼玉県比企郡嵐山町東武東上線
武蔵藤沢駅むさしふじさわ埼玉県日高市西武池袋線
武蔵横手駅むさしよこて埼玉県日高市西武池袋線

東京23区内では武蔵小山駅や武蔵新田駅、武蔵関駅などがありますが、いずれも都心から西側に点在していますね。

駅名だけでなく、様々な名称で使われる 相模(さがみ)

武蔵国と南側で隣接していた相模国
行政区分は現在の神奈川県から川崎市横浜市を除いた全域と、静岡県熱海市のあたりとされています。

駅名駅名かな所在地路線名
相模原さがみはら神奈川県相模原市JR横浜線
小田急相模原おだきゅうさがみはら神奈川県相模原市小田急小田原線
相模大野さがみおおの神奈川県相模原市小田急小田原線
相模大塚さがみおおつか神奈川県大和市相鉄本線
相模沼田さがみぬまた神奈川県南足柄市伊豆箱根鉄道大雄山線
相模湖さがみこ神奈川県相模原市JR中央線
相模金子さがみかねこ神奈川県足柄上郡大井町JR御殿場線

また駅名以外では、相模湾や相模川、自治体名では相模原市、交通機関では相模鉄道、JR相模線などでも用いられています。

おもに千葉県の”上”のほう 下総(しもうさ)

下総国は現在の千葉県北部茨城県南部にかかる区分とされています。

駅名駅名かな所在地路線名
下総中山しもうさなかやま千葉県船橋市JR総武線
下総豊里しもうさとよさと千葉県銚子市JR成田線
下総松崎しもうさまんざき千葉県成田市JR成田線
下総神崎しもうさこうざき千葉県香取郡神崎町JR成田線
下総橘しもうさたちばな千葉県香取郡東庄町JR成田線

都心から一番近いもので下総中山駅、その他は銚子や成田、香取など千葉県北東部に点在します。

ここで察しの良い方はお気づきでしょう。地図上で見ると千葉県の「上のほう」に位置しており、上なのに下になっているんですね。
これははっきりと申し上げて、地図上の位置は全く関係ありません(笑)
その理由は、その次の上総の項でご説明しましょう。

千葉県の真ん中らへん 上総(かずさ)

続いて千葉県の下のほうにあった上総国は、現在の市原市や木更津市、君津市、茂原市など房総半島の北部と中部にあたります。

駅名駅名かな所在地路線名
上総一ノ宮かずさいちのみや千葉県長生郡一宮町JR外房線
上総興津かずさおきつ千葉県勝浦市JR外房線
上総湊かずさみなと千葉県富津市JR内房線
上総清川かずさきよかわ千葉県木更津市JR久留里線
上総松丘かずさまつおか千葉県君津市JR久留里線
上総亀山かずさかめやま千葉県君津市JR久留里線
上総村上かずさむらかみ千葉県市原市小湊鉄道
上総三又かずさみつまた千葉県市原市小湊鉄道
上総山田かずさやまだ千葉県市原市小湊鉄道
上総牛久かずさうしく千葉県市原市小湊鉄道
上総川間かずさかわま千葉県市原市小湊鉄道
上総久保かずさくぼ千葉県市原市小湊鉄道
上総鶴舞かずさつるまい千葉県市原市小湊鉄道
上総大久保かずさおおくぼ千葉県市原市小湊鉄道
上総中野かずさなかの千葉県夷隅郡大多喜町小湊鉄道
いすみ鉄道
上総東かずさあずま千葉県いすみ市いすみ鉄道
上総中川かずさなかがわ千葉県いすみ市いすみ鉄道

区分に合うように、やはり房総半島中部に多く密集しており、特に上総一ノ宮駅は多くの列車の行き先となっていることからよく目にする駅名ですね。
おもに小湊鉄道線の駅に多く用いられています。

また上総、下総の他にも国名で上、下とつけられた地域は多く存在していますが、いずれも都から近い場所にあるのが上とされており、この上総の場合は、東京湾を挟んで半島の南東側、つまり富津岬のあたりがいちばん都に近いとされたことから、こちらが上総とされたそうです。

千葉・房総では馴染み深い 安房(あわ)

最後は千葉県・房総半島の最南部にあった安房。国名は安房国と書いて「あわのくに」と読みます。

駅名駅名かな所在地路線名
安房小湊あわこみなと千葉県鴨川市JR外房線
安房天津あわあまつ千葉県鴨川市JR外房線
安房鴨川あわかもがわ千葉県鴨川市JR内房線
安房勝山あわかつやま千葉県安房郡鋸南町JR内房線

位置の関係上、千葉県鴨川市に多く、路線もJR外房線、内房線のいずれかとなります。
安房鴨川駅は、JRの特急わかしおの起終点となっているので、目にすることも多いでしょう。

国名の由来は、阿波国(現在の徳島県阿波地方)から移り住み、開拓を進めた人々に由来しているのだそう。

なぜ旧国名が使われたのか

旧国名 街道ごとの区切り

駅名は付ける際に、元々の地名や施設に由来するものがほとんどですが、ではなぜこれらの駅名は旧国名が付与されたのでしょうか。

これは日本国内にある同名の地名を由来とする駅名が数多く存在し、すでにある駅名との混同を避けるために旧国名が付与されたといいます。

前述で取り上げた「武蔵小金井駅」を例に取り上げると
武蔵小金井駅は1926年(大正15年)に開業していますが、このときすでに栃木県下野市にある東北本線・小金井駅(1893年(明治26年))に開業しており、混同を避けるために武蔵が付けられたのだろうと推測できます。

また武蔵溝ノ口駅においては、東急側は溝の口駅を名乗るにも関わらず武蔵を冠していますが、これは旧国鉄内に溝口駅(みぞぐちえき・JR播但線)という駅があり、こちらも混同を避けるためにこのようになったとされています。

場所が遠かれ近かれ、駅の場所をより明確にわかりやすくするための工夫だったのでしょう。

まとめ

今回は首都圏に絞ってご紹介しましたが、旧国名を付与する駅名は全国各地にあり、例えば兵庫県西部の「播州」(播州赤穂駅など)や、長野県の「信濃」(信濃大町駅など)などたくさんの事例が存在します。

それぞれの地域ごとに、どんなパターンがあるのかなど、深堀りしていくのも楽しそうですね!

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