都心へひとっ飛び!通勤は速く快適に、首都圏の私鉄通勤ライナー特集

都心へひとっ飛び!通勤は速く快適に、首都圏の私鉄通勤ライナー特集

クローズアップ
2022.01.15 2022.07.30
EKIMAG

人々の生活の足となる鉄道。朝や夕方になると通勤通学で利用する多くの人を運ぶため、特に都市圏の鉄道路線は満員となることが日常茶飯事です。そんな中近年注目されているのが「通勤ライナー」と呼ばれる列車。有料課金で確実に着席ができるというサービスが好評で、2010年代後半より全国の大手私鉄で導入されるケースが多くなりました。えきまえふぁんが活動の中心とする首都圏でも、数多くの列車が設定されているということで、今回は通勤に特化した有料課金で乗れる列車を調査してみました!

※今回は特急列車とは別の料金体系を採用する列車に限定します。

ライナーのパイオニアはやはり京成

京成AE形
京成AE形車両

京成といえば都心〜成田空港を結ぶスカイライナーが看板列車となっていますが、朝夕の通勤ラッシュ時には普段走行する成田スカイアクセス線ではなく、京成本線を経由して沿線の主要駅に停車する「モーニングライナー/イブニングライナー」を運行しています。その名の通り時間帯によって列車愛称が変わり、朝に運行されるのがモーニングライナー。夕方に運行されるのがイブニングライナーとなっています。
その歴史は首都圏大手私鉄で最も古く、両列車が設定されたのは1984年12月と、30年以上の長い歴史を持っています。
運行に充当される車両は、スカイライナーと共通のAE形が使用されますが、料金体系はスカイライナーとは別となっており、座席指定制でライナー券1,250円のスカイライナーに対し、モーニングライナー/イブニングライナーは、座席定員制で全区間一律420円と、かなりお得な価格設定となっています。

京成AE形車内

座席もスーツケースがスッポリ入る、広々としたシートピッチが売りのAE形ということで、快適な通勤時間を過ごすことができます。

モーニングライナー/イブニングライナー

■運行区間
京成上野〜成田空港間(一部が京成成田止まり)

■料金
全区間一律・420円(小児210円)

主要駅を通過する、都心通勤に特化した京急ウィング号

京急ウィング号

お次は赤い電車でおなじみ京急電鉄。そこで運行されるのは京急ウィング号。京急にはもともと特別料金がかかる列車はありませんが、2扉のクロスシートを採用し、快速特急(現在の快特)専用車両として運行していた2000形を使用し、夕ラッシュ時の座席定員制列車として1992年に運行が開始されました。
2015年までは夕ラッシュ時のみの運行でしたが、需要が高まったことで朝ラッシュ時の運行も開始。それぞれモーニング・ウィング号、イブニング・ウィング号の愛称で振り分けられています。モーニング・ウィング号は上大岡駅以南、イブニング・ウィング号は品川駅からの乗車には「ウィングチケット」300円(大人・小児共通)が必要となりますが、イブニング・ウィング号は上大岡駅以南では料金不要で乗車できます。
またこのウィング号の特徴として挙げられるのは、なんと言っても品川駅〜上大岡駅間を無停車で運行されていること。京急の主要駅で快特停車駅となっている京急蒲田駅や京急川崎駅。さらに県下の大ターミナル駅である横浜駅ですら通過してしまうという、遠方通勤に特化した列車となっています。

2000形が引退した現在は、2扉クロスシートの後継となった2100形が充当。快特運用時は座席競争率が高い車両ですが、ウィング号では座席指定で安心の着席保証が付いています。

この投稿をInstagramで見る

issa.k(@issa.k_nori)がシェアした投稿

これまでは8両編成で運行されてきましたが、2021年5月よりデュアルシートを採用し、京急初の水洗トイレが設置された新型車両1000形1890番台(Le Ciel)導入されると、12両編成での運行が開始されました。30年もの間運行され続けている列車ですが、その人気は衰えることなく京急沿線住民の通勤を支え続けています。

京急ウィング号

■運行区間
モーニング・ウィング号:三浦海岸駅〜泉岳寺駅(一部は横須賀中央駅始発)
イブニング・ウィング号:品川駅〜三崎口駅(一部は京急久里浜駅止まり)

■料金
300円(大人・小児共通)
イブニング・ウィング号は上大岡駅より先料金不要。

首都圏初のデュアルシートを採用した東武鉄道

東武50090系

首都圏だけでなく関東随一の路線網を誇る東武鉄道。かねてよりスペーシアやりょうもう号などの特急列車を運行していますが、長らく設定のなかった東上線での有料座席指定列車として2008年に運行開始されたのがTJライナー。それまでは特急型車両や転換クロスシート付きの車両が充当されることがセオリーとなっていたライナー列車ですが、TJライナーは状況に応じてクロスシートとロングシートに切り替えができるデュアルシートが搭載された、4扉の通勤型車両50090系が専用車両として充当されています。

この投稿をInstagramで見る

 

@donright16がシェアした投稿

 

TJライナー

■運行区間
池袋駅〜森林公園駅・小川町駅

■料金
大人370円、小児190円

東武70090系
出典:二マナナ(ニマチャン)@鉄道 様(@207kei

一方の東上線とともに動脈路線となっている伊勢崎線東武スカイツリーライン)でも導入されたライナー列車がTHライナー。これまでのライナー列車はおもに自社の路線内で完結するものでしたが、このTHライナーはかねてより直通運転を行っている東京メトロ日比谷線へ直通するライナーとなっています。

基本各駅停車/普通での運用となっている日比谷線直通系統列車においては初の優等運用列車ということで、埼玉県東部から秋葉原や銀座、霞が関といった繁華街や官公庁街へのアクセスがとても便利なものになりました。

THライナー

■運行区間
久喜駅〜恵比寿駅(下りは霞ヶ関駅始発)

■料金(事前購入)
東武線内:25kmまで370円(小児190円)、26km以上470円(小児240円)
東京メトロ線内:一律210円(小児110円)
※東武線〜メトロ線を跨いで乗車の場合は、上記の合算となります。
※車内で購入の場合は+200円

人にやさしい車両が通勤にもやさしい、西武鉄道

西武40000系

お次も東京と埼玉を結ぶ路線網のひとつ西武鉄道。レッドアローやラビューといった特急型車両が花形ですが、東武と同様のデュアルシートを搭載する通勤型車両40000系を使用し、池袋線を中心に運行されるSトレイン。平日以外に土日祝日も運行されますが、それぞれ運行形態が異なり、今回は通勤ライナーとして使用される平日のパターンをご紹介。平日は朝ラッシュ時、所沢駅を起点に、東京メトロ有楽町線に直通、飯田橋駅、有楽町駅を経由して豊洲駅まで。夕ラッシュ時は豊洲駅から最長で小手指駅まで運行されています。

Sトレイン(平日運用)

■運行区間
小手指駅・所沢駅〜豊洲駅

■料金
西武線内:一律300円
東京メトロ:一律210円

この投稿をInstagramで見る

 

kaede(@ka___1819)がシェアした投稿

一方の動脈路線となっている西武新宿線でも運行されているのが拝島ライナー。西武新宿駅から拝島線を経由して拝島駅までを結びます。こちらは夕ラッシュの下り列車のみの運行となっています。高田馬場駅を出ると小平駅まで無停車で、以降は終点拝島駅まで各駅に停車します。座席指定券は西武新宿駅・高田馬場駅からの乗車のみ必要で、小平駅から先は料金不要となります。この運用体制は京急ウィング号と似ていますね。

拝島ライナー

■運行区間
西武新宿駅〜拝島駅

■料金
大人300円、小児150円
※小平駅以降は乗車券のみで乗車可能
※車内で購入の場合は+200円

京王初の有料列車 京王ライナー

京王5000系

東京都西部を代表する動脈路線のひとつ京王電鉄。通勤路線のイメージが強かった京王始まって以来の有料列車としてデビューしたのが京王ライナー。これに伴いデュアルシート搭載の新型車両5000系を導入し運行されています。京王ライナーは平日のみならず土休日にも運行されており、これまでの京王線のイメージを一新する列車となっています。運行区間は京王八王子駅を発着するものと、相模原線へ直通し橋本駅を発着する2系統となっており、いずれも主要駅でありハブ機能の役割を持つ調布駅を通過することが特徴のひとつ。座席指定券は一律410円で、下り列車は新宿駅(土休日は明大前駅)を発車して最初の駅(京王八王子行きは府中駅、橋本行きは京王永山駅)から先は、料金不要となります。これまでのライナー列車の実績を踏まえていいとこ取りをしたようなサービスで、京王のライナーへの意気込みを感じます。

京王5000系車内

京王ライナー

■運行区間
新宿駅〜京王八王子駅・橋本駅

■料金
一律410円(大人・小児共通)
車内で購入の場合は700円

夕方になると1両が有料となる、東急大井町線

東急6000系

最後にご紹介するのは、これまた通勤路線のイメージが強い東急電鉄。実は東急は平日にライナー列車は走っておりません(※1)。それでは通勤ライナーではないじゃないか!とツッコミをしたくなるところですが、ここでご紹介するのは、終日料金不要の種別で走るにも関わらず、突如として1両が有料に化ける列車。それが大井町線で運行される急行列車です。はて・・・料金不要の急行列車の1両のみが?一体どういうことでしょう。

種明かしをすると、夕ラッシュ時に大井町駅を発車する急行列車の一部が「Qシート」と呼ばれる有料座席指定車両となり運行されます。QシートはSトレインや京王ライナーなどと同様のデュアルシートを搭載した車両で、朝や日中時間帯は料金不要でロングシートで運用し、Qシート設定時はクロスシートで座席指定制となります。これはJRの普通列車のグリーン車と、デュアルシート車両の特性を利用した画期的なサービスといえますね。

大井町線でも好評のQシートですが、2023年度以降には東横線にも導入されることが決まりました。こちらは10両編成中の4・5号車に組み込まれるということで、運行区間や料金、購入方法などは改めて発表されるということで、今後の動きにも目が離せません!

Qシート

■運行区間
大井町駅〜長津田駅間

■料金
一律400円(大井町駅〜自由が丘駅間で乗車の場合のみ)
※二子玉川駅〜鷺沼間は降車のみ。
たまプラーザ駅〜長津田駅間はフリー乗降区間。

(※1)=土休日は東横線で元町・中華街駅〜東京メトロ副都心線・西武池袋線経由〜西武秩父を結ぶSトレインが運行

まとめ

首都圏のみならず全国で波及してきている有料座席サービス。各社でさまざまな特徴がありつつも、利用者のメリットや他社の実績なども踏まえたサービスを展開していることで、各々で切磋琢磨しているように思えました。新型コロナウィルスによる利用者数低下の問題が各社でありつつも、今後も合理的に無くすという選択肢だけでなく、利用者にとってよりよいサービスとして展開していってほしいと心から願っています。

クローズアップのえきマガ

Category Posts