向ヶ丘遊園駅周辺 ―時代とともに変わりゆく、かつての行楽地―

向ヶ丘遊園駅周辺 ―時代とともに変わりゆく、かつての行楽地―

神奈川県
2022.01.05 2022.08.21
MUKOGAOKA-YUEN

神奈川県川崎市にある小田急線の向ヶ丘遊園駅。2面4線のホームと折り返し設備を有し、ここ最近は東京メトロ千代田線や、JR常磐線に乗ってるとよく見る行先でもあります。
その駅名からも見て取れるとおり、向ヶ丘遊園という遊園地の最寄り駅でしたが、それはもう過去の話。多摩丘陵の自然と台地が広がる行楽地は、時代を超えて新たなる風景に生まれ変わろうとしていました。

今回はそんな向ヶ丘遊園駅の周辺を見ていきたいと思います。

レトロな駅舎と進む再開発。駅周辺の様子

向ヶ丘遊園駅はホームを横断する跨線橋で繋がれ、北口・南口でそれぞれ改札が分かれます。

向ヶ丘遊園駅北口
北口の駅舎

ギャンブレル屋根と呼ばれる駒形の屋根が印象的な北口の駅舎。開業当時からあるとても貴重な建物で、2019年に駅舎のリニューアルが施され、レトロな雰囲気を残しながら維持されています。

向ヶ丘遊園駅北口ロータリー

駅前の道路は、駅を中心とした放射状に伸びる昔ながらの構造となっていて、その片隅にバスロータリーが設けられています。こちらは小田急バスが発着するロータリーとなっており、西側にある明治大学や専修大学を結ぶ路線や、あざみ野駅を結ぶ路線が発着します。
その奥には高層マンション・アトラスタワー向ヶ丘遊園が建ち、低層階に東急ストアや専修大学のサテライトキャンパスが入ります。

向ヶ丘遊園駅北口前の再開発区域

また向ヶ丘遊園駅は、隣駅の登戸駅からは600mほどしか離れておらず、周辺で進められている再開発区域に当駅も含まれています。かつては商店や住宅がならぶ地域でしたが、ご覧の通り現在では更地となり、区画整理が進められています。

向ヶ丘遊園駅南口

一方の改札口である南口。こちらもギャンブレル屋根を用いた駅舎となっていますが、リニューアルによって北口と合わせた造りとなりました。

ライフ

南口はかねてより商業が発展していた地域で、駅前は飲食店やスーパーなどが立ち並びます。駅の正面はすぐロータリーとなっており、溝口駅南口たまプラーザ駅などを結ぶ川崎市バス、東急バスが発着しています。実はこの南口こそが駅名の由来ともなった向ヶ丘遊園への玄関口で、かつてはこのロータリーの先から向ヶ丘遊園を結ぶモノレールの駅がありました。(現在は撤去済み)

取り壊しが進むダイエー向ヶ丘店跡

また駅前ロータリーから通ずる道を歩いていくと、解体中の建物が見えてきました。こちらはかつて営業していたダイエー向ヶ丘店の跡地で、長らく周辺の商業を担っていましたが、2020年に惜しまれつつ閉店。跡地は複合施設に生まれ変わる予定だそうです。

多摩丘陵の台地に形成される自然と文化、生田緑地

生田緑地

南口のロータリーから伸びる道を進み、府中街道と交差する稲尾橋交差点を横断すると、緑の木々に囲まれた地域に差し掛かります。ひたすらに真っ直ぐ進むと見えてくるのが「生田緑地」。多摩丘陵の台地を利用して造られた都市公園で、95.5ヘクタールにも及ぶ広大な敷地に豊かな自然が広がる、川崎市最大の都市公園です。

日本民家園

入り口からすぐ右手にある趣ある建物は「川崎市立日本民家園」。その名の通り合掌造りなどの日本の古民家の保存、藍染など日本の伝統文化を体験できる施設となっています。またその展示品の多くが重要文化財および重要有形民俗文化財に指定されています。

川崎市立日本民家園

営業時間:3月~10月/9時30分〜17時、11月~2月/9時30分~16時30分

休園日:月曜日(祝日の場合は開園)、祝日の翌日(土日の場合は開園)、年末年始
※臨時休園日あり

入場料:一般/500円、高校生・大学生/300円、中学生以下/無料(要証明書)、65歳以上/300円
市内在住の65歳以上の方は無料

公式サイトはこちら

かわさき宙(そら)と緑の科学館

さらに奥へ進むと、広場と左手に見える建物は「かわさき宙(そら)と緑の科学館」。プラネタリウムを中心に天文資料や川崎の自然をテーマにした資料の展示を行う施設となっています。またその奥には往年の名蒸気機関車・D51が保存されています。

かわさき宙(そら)と緑の科学館

営業時間: 9:30〜17:00

休館日:月曜日(祝日の場合翌火曜)、祝日の翌日(土・日の場合は開園)、年末年始

入場料:プラネタリウム観覧料/一般400円、高校生・大学生/200円、 65歳以上/200円(川崎市在住の方無料・要証明書)、中学生以下/無料(要証明書)

公式サイトを見る

スハ42

さらにその右手には旧型客車も保存されており、日中時間帯は車内の開放も行われています。(9:30~16:30、12/29~1/3を除く。

岡本太郎美術館

またさらに奥へ進み、高々と生い茂る雑木林の奥にひっそりと佇む、遺跡を思わせるようなこの建物は「岡本太郎美術館」。「芸術は爆発だ」の名言を残し、大阪万博のシンボル・太陽の塔をはじめとした多くの芸術作品を世に送り出してきた芸術家、故・岡本太郎氏が生前生まれ育ったここ川崎市に寄贈した作品1779点を展示しています。館内はその他にもカフェテリアやショップが併設。奥の階段を登った先には屋外展示品の「母の塔」が展示されており、岡本太郎の世界を存分に楽しめる施設となっています。

岡本太郎美術館

営業時間:9:30~17:00(入館は16:30まで)

休館日:月曜日(月曜が祝日の場合は除く)、祝日の翌日(祝日の翌日が土日にあたる場合を除く)、年末年始、他に臨時休館日あり

観覧料:料金は展覧会ごとに異なります。中学生以下無料

公式サイトを見る

レジャーやハイキングはもちろん、歴史や科学、芸術などの文化が楽しめる自然型テーマパークと言っても過言ではない生田緑地。行ってみて絶対に損はないはずです!

時代とともに変わりゆく、かつての行楽地

向ヶ丘遊園駅はその名の通り、遊園地の最寄り駅ということからつけられた駅名ですが、肝心の遊園地はどこにあるのか・・・答えは現存せず。「花と緑の遊園地」をコンセプトに、ジェットコースターや観覧車などのアトラクションはもちろん、夏季にはレジャープール、冬期はプール施設を利用しスケートリンクが運営されていましたが、2002年に閉園。跡地は一部を除いて手つかずの状態で残されています。さて、その一部が今どのようになっているかというと・・・

藤子・F・不二雄ミュージアム
藤子・F・不二雄ミュージアム

そう、登戸駅でもご紹介していますが、「藤子・F・不二雄ミュージアム」として生まれ変わりました。この場所はかつてボーリング場や向ヶ丘遊園駅を結ぶモノレールの駅舎がありました。この地にミュージアムが建設されたのは、藤子・F・不二雄氏が半生を過ごしたのがこの川崎市多摩区であったことがきっかけとなったそうです。館内は藤子・F・不二雄氏が残した作品の展示はもちろん、周辺の自然を利用し、ドラえもんなど人気キャラクターのモニュメントなどが展示されています。

藤子・F・不二雄ミュージアム

開館時間:10:00~18:00(※入館は日時指定による予約制

入館料:大人・大学生/1,000円、高校・中学生/700円、子ども(4歳以上)/500円

公式サイトを見る

生田緑地ばら苑

さらにもう一つがこちらの「生田緑地ばら苑」。実はこのばら苑、元は向ヶ丘遊園のいち施設として運営されており、言うなれば向ヶ丘遊園の貴重な生き残り施設。閉園後も川崎市が施設維持を行い、苑内のばらはボランティアさんたちの手によって管理されています。こうした自然環境を維持する取り組みは、街を見るたびに感銘を受けます。

またその他に残る敷地についても、紆余曲折ありながらも再開発の計画が浮上しており、自然を活かした複合施設として生まれ変わる予定だそうです。時代は変われど少しずつ変わりゆく街。今後どうなっていくのかとても楽しみです。

まとめ

多摩川と多摩丘陵に囲まれた自然と台地。昭和の時代は行楽地として栄え、平成・令和を迎え新たなる発展を遂げる街・向ヶ丘遊園。筆者も幼少期はこの近辺で過ごし、家族でプールやスケートに行ったり、中学の同級生とボーリング場で遊んだり、青春時代の思い出がたくさん詰まった場所です。閉園はとても寂しかったですが、その後の施設がどうなるのかは注目していました。閉園から20年が経とうとしている今でも目立った進展は見られていませんが、計画は進んでいるようですので、今後も引き続き注目していきたいと思います。また、私自身深い思い入れがある場所でもあるので、この先の時代にも活きる価値あるものにしてほしいなと思います。

 

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