横浜市最南端の街・金沢区は、潮干狩りや海水浴など海のレジャーも楽しめれば、ハイキングコースも多く山にも囲まれた自然の豊かさが魅力です。街の中心・玄関口は、当サイトでもご紹介している金沢文庫駅。そしてここ金沢八景駅となっています。当駅は区内を走る京急線と、当駅から新杉田駅を結ぶ金沢シーサイドラインが接続する、金沢区のターミナル駅としても機能しています。
乗換の利便性は抜群!高低差の激しい駅
京急とシーサイドラインの改札は、デッキの3階部分で平面接続ができる構造となっており、両線との乗換は非常に便利。その反面地上からの乗換は階段か、ウィングキッチンのエスカレーター等を使って上る必要があります。
京急のホームは2面4線の退避可能駅。お隣の金沢文庫駅同様、ウィング号を含む全ての列車が停車します。また当駅より京急久里浜方面へ向かう本線と、逗子・葉山方面へ向かう逗子線との分岐駅ともなっています。
一方のシーサイドラインは当駅が起終点となるため、1面2線の頭端式ホームとなります。当線は長らく現在の位置より200m手前の場所に仮設駅で営業していましたが、開業から30年となる2019年に念願の本設駅、現在の駅舎に移転。京急との接続がより便利になりました。
高低差のある駅前、地上側の様子
こちらは駅の東側。改札や交通広場、商店などはこちらに集約されています。地上から改札口のほうを見るとデッキが2階部分だけでは足らず、3階にまで伸びているのがわかります。
その真下にはバスロータリーがあり、京急バスや神奈中バスが発着します。


シーサイドラインの駅真下には国道16号線が伸びます。
前述でも記したとおり、シーサイドラインの駅舎は現在の位置に移設する前までは国道16線より手前の、ちょうどこの写真のあたりに駅舎がありました。京急との乗換には国道を渡る必要もあるため、信号待ちの時間などもあり不便でしたが、それもようやく解消されました。

一方の西側へ出るには双方の改札横から伸びる歩道を進みます。


出た先は木々が生い茂る高台が目前に迫り、階段の途中に権現山公園(後述)の入口があります。商業施設はなく、住宅がちらほら建ち並びます。
西側の階段から京急線に沿って歩いていくと、左手に横浜市立大学 金沢八景キャンパスが見えてきます。学生さんが歩いていくのが多く見受けられました。
その正面には、京急金沢検車区の留置線が隣駅の金沢文庫駅から伸びています。またこの写真の左側には、総合車両製作所(J-TREC)という鉄道車両を製造する工場があります。工場内が撮影禁止のため様子は見れませんが、首都圏をはじめとした鉄道事業者の車両を製作することもあり、新型車両搬出の際には多くの鉄道ファンがその姿を見届けるべく集まるスポットでもあります。
少数だけどツボは押さえた商業施設
駅横には直結もしている京急直営の施設・ウィングキッチン金沢八景。飲食店や各種サービス店舗の他、改札と同階層の3階に京急ストア、1階部分にセブンイレブンが入るなど駅前の利便性に一役買っています。
お次は駅から少し離れますが、国道16号線に沿って北へ400mほど進んだ場所にイオン金沢八景店があります。ショッピングセンターということもあり、食料品の他専門店なども入るので、周辺のお買物スポットとしては総合的に機能しているようです。
歌川広重も愛した景勝地、アニメの聖地にもなった周辺のみどころ
駅からシーサイドライン沿いに歩いていくと、左手側に見えてくる入り江は平潟湾。これに沿ってシーサイドラインが伸びており、沿線のビュースポットのひとつとなっています。かつては鎌倉の外港としても栄えたそうです。

さて、駅名にもなっている金沢八景ですが、昔はどのような場所だったかというと、八景という名の通り、8つの優れた風景が見られる場所であったとして、このような地名が名付けられました。江戸後期には浮世絵師・歌川広重によって名所絵揃物「金沢八景」が描かれ、代表作の一つともなりました。今ではそのほとんどが埋立て等により、その面影を見ることはできなくなってしまいましたが、広重の8つの絵図は、平潟湾プロムナード沿いの石碑に展示されています。
金沢文庫の図のひとつ・瀬戸秋月の舞台となった瀬戸神社。
国道16号線を挟んで真向かいには、また別の鳥居が。
進んでいくと、橋の向こうにポツンと浮かぶ小島が。その先には琵琶島神社があります。


さて、この金沢八景ですが、ここ最近アニメの聖地としても知られるようになりました。その作品は2022年に放映されたアニメ・ぼっち ざ ろっく。根暗で陰キャラな主人公・後藤ひとりが、ロック・バンドを通じて人として成長?するストーリーを描いた作品で、そのキャラクターが多くの共感を呼び、話題となりました。そんな後藤ひとりの自宅が、金沢八景駅付近とされており、作中でもちらほら登場することがありました。
最後にご紹介は西側の出口を出てすぐにある権現山公園。駅の改良工事に合わせて整備された、2022年4月にオープンしたばかりの、金沢八景の新たなみどころスポットとなっています。

公園に入るとすぐに、茅葺屋根の趣ある立派な日本家屋が目に飛び込んできます。元々この場所には円通寺というお寺があり、この建物は客殿として使われていました。廃寺以降は住居として使われていましたが、一度解体されたものの、残されていた部材を用いて復元されました。建物内は公園の開園時間内なら無料で中に入ることができます。
また公園内の階段を登っていくと、展望スペースもあり、金沢八景の街並みを一望することができます。
まとめ
美しい八つの風景が見られた場所として、江戸時代に浮世絵の名作も生まれた地・金沢八景。時を経てこの令和の時代では、マンガ・アニメという絵の舞台としても描かれました。
昔の美しい光景も今ではもう見られませんが、プロムナードから望む平潟湾、そこを横断するシーサイドラインが走る景色は、現代の金沢八景のいち風景ではないでしょうか。
形を変えても魅力ある場所というのは、人を寄せ付ける不思議な力があるのかもしれませんね。