どうしてそんなに高いのか? 首都圏の高額運賃問題を考える

どうしてそんなに高いのか? 首都圏の高額運賃問題を考える

コラム
2021.12.14 2022.06.07
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私達の生活を支える鉄道。それを利用するために私達は運賃を支払い、目的地へと運んでもらいます。

各事業者ごとに運賃は異なりますが、初乗り運賃をそれぞれ比較してみると、首都圏のJR線では140円(ICカード:136円)。私鉄各線でもまちまちではありますが、大手私鉄で130〜170円くらいとなっています。

しかしこれは大手私鉄やJRでの話。中には地方の中小私鉄や、第三セクターと呼ばれる地域に特化した事業者が運営しているケースなどもあり、これらは大手の事業者とは異なる価格設定をしています。特に1980年代〜90年代のバブル期、バブル崩壊後に開業した路線は大手と比べても高額な運賃設定をされることが多くなっています。
できれば安価に移動したいものですが、そうしたくてもできない事業者や利用者の事情がそこにはありました。

そこで今回は運賃が高くなる理由、さらに高額運賃が取り沙汰されている鉄道事業者の事情を考察していきたいと思います。

そもそもなぜ運賃が高くなるのか

改札の運賃表

「運賃が高いなんて、そんなの利用したくない!」「運賃下げろー!」と言う前に、一旦落ち着きましょう。そもそもなぜ運賃が高額になってしまったのか、その原因を探ってみましょう。

まず新しく鉄道を敷設するにはもちろん大規模な工事を経て晴れて開業となるわけですが、線路の敷設、駅舎の建設、高架線やトンネルなどの構築、その他駅周辺の開発など・・・巨額な設備投資が行われるのです。その建設にかかった費用を開業後に償却しなければなりません。じゃあそれを誰がやるのか・・・?
それは私達利用者が運賃として支払っているのです。

これは大手私鉄でも行われているシステムで、近年開通した路線などには「加算運賃」と呼ばれる通常の運賃とは別に、運賃を上乗せされるシステムが導入されています。これは新線の建設にかかった費用を償却するなどの目的に、利用してもらう分費用を賄ってもらおうという仕組みです。

「えーっ、そんな運賃が高くなっちゃうなら、今までのルートのほうが安いし・・・」

そう、それこそがこの高額運賃問題の課題で、運賃が高額だと利用者が伸び悩んだりすると、建設費の償却がしたくてもできません。利用者からしても、やはりお財布事情からできれば安い方法で行きたいと思うのが自然です。
これに関しては考え方それぞれではあるので大声では申し上げられませんが、事業者は利用者のために巨額の投資をして鉄道を開業させたわけですが、バブル崩壊以降の不景気、建設費や物価の高騰などが祟り、安くしたくてもできない事業者の事情。利便性が向上したとて、生活費のやりくりなどで、できれば出費を抑えたい利用者の事情。こうした双方の事情から、なかなか解決の糸口が見つからず、難しい問題となっています。

ではここから高額運賃路線と言われている路線と、高額運賃の背景にある問題を見ていきましょう。

社会問題にまで発展。ついに運賃値下げを発表した、北総鉄道

まずご紹介するのは、東京都葛飾区の京成高砂駅から千葉ニュータウンを経由し、印旛日本医大駅を結ぶ「北総鉄道」。京成高砂からは京成線を介して都営浅草線、京急線と直通運転をしており、都心直結の路線ともなっています。また京成電鉄の成田スカイアクセスとしてもしても活用されており、都心から成田空港までを最速36分で結ぶ重要な役割を担っています。

北総鉄道

そんな主要路線ですが、運賃事情はどうなのでしょうか?
北総鉄道の初乗り運賃は210円(ICカード:203円)。これを京成高砂駅を起点に、東松戸駅までが450円(IC:449円)。新鎌ヶ谷駅、580円(IC同額)。千葉ニュータウン中央駅、780円(IC:773円)。
ここからさらに都心方面へ行こうとするとまた事情が変わります。京成高砂駅から京成線、都営浅草線へと繋がりますので、運賃は北総線の運賃から京成分+都営地下鉄分の2社線分が上乗せされます。
そうすると日本橋駅〜新鎌ヶ谷駅間は、北総線経由で最速35分で行けるものの、運賃は950円となります。ちなみに東京メトロ東西線(西船橋駅)〜JR総武線(船橋駅)〜東武アーバンパークライン経由で54分(+約20分)かかりますが、運賃は630円と北総線経由と比べて320円も安く行くことができます。

こうした事情から北総線は高額運賃路線というイメージがついてしまい、この問題に関しては国会にまで議論が及んだほか、住民からの訴訟問題にまで発展していきました。

しかしそんな北総線にも新たな動きが・・・!なんと2022年10月より運賃の値下げが発表されました。
初乗り運賃は210円→190円となり、通学定期券に関しては64.7%の値下げとかなり減額。京成高砂~印西牧の原駅間の1ヶ月定期で10,000円。6ヶ月で54,000円の値下げとなります。
この背景には、来年度中に累積損失解消が見込まれることからとのことですが、こうした企業努力が実を結ぶことを願ってやみません。

大手私鉄でも昔は別会社だった、京成千原線

お次も千葉県にあります、こちらはなんと大手私鉄の部類となります「京成千原線」。京成と言ったら北総線の項でもご紹介していますが、都心から成田空港へのアクセスを担う大手私鉄路線。京成津田沼〜千葉中央間の千葉線と直通し、千葉中央〜ちはら台間を結びます。一体千原線はなぜ高額運賃路線となったのか。。。千原線に乗り入れる京成3600形

その理由は、千原線は元々京成の路線ではなく「千葉急行電鉄」という第三セクターの路線として、1992年に開業しました。こちらもやはり建設費の高騰、工事の遅延から費用が嵩み、開業時から運賃が高額に設定せざるを得なかったそうです。また時期としてバブル崩壊による沿線住宅の需要低迷の煽りを受け、開業から6年後の1998年に京成電鉄へ路線譲渡。千葉急行電鉄は消滅し、京成千原線となりました。

「同じ京成の路線になったんだから、運賃もその分安くなるのでは?」と普通ならそう考えると思いますが、現実はそう甘くもなく。。。
千葉線と千原線は同一事業者にも関わらず、千葉中央駅を境に運賃が別体系となります。そのため千葉中央駅の隣駅同士である、千葉寺駅〜京成千葉駅間に乗車すると、2駅しか乗っていないにも関わらず280円かかります。これは近隣駅となるJR蘇我駅〜千葉駅間の190円。近隣を走るバス路線でも220円で千葉駅まで行けるので、それを見るとやはり高額に感じてしまいます。
その奥のちはら台駅やおゆみ野駅へ行くと、こちらも近隣にJR外房線の鎌取駅があること。さらに総武快速線や京葉線への直通列車もあることから、都心アクセスへの利便性も相まって千原線は不利な状況に立たされています。(千原線は千葉線と直通運転をしているものの、一部を除くほとんどが京成津田沼駅止まり。優等種別運行はなく普通列車のみ。)

しかし千原線の千葉寺駅や、学園前駅、おゆみ野駅は新興住宅地として開発された新しい街で、住環境に優れた街でもあるので、どうか利用者にとって使いやすい路線になってほしいと願っています。

バブル崩壊後に開業した”高速鉄道”

首都圏の高額運賃路線をそれぞれ分析してみると、ある共通項があります。それはいずれもバブル期〜崩壊後に開業された路線だということ。そんな平成の世に生まれた路線を一気に見てみましょう。

東葉高速鉄道に乗り入れる、東京メトロ05系
東葉高速鉄道に乗り入れる、東京メトロ東西線

こちらも千葉県の路線で、西船橋駅〜東葉勝田台駅間を結ぶ「東葉高速鉄道」。西船橋駅から東京メトロ東西線と直通運転を行い、都心直結している路線の一つです。東京メトロのドル箱路線でもある東西線との直通しているものの、諸般の事情からこちらも初乗り運賃が210円。西船橋駅〜東葉勝田台駅間16.2kmで640円とやはり少し高めですが、北習志野駅や八千代市の中心部を走ること、東西線との直通。八千代市内を中心に宅地開発が進んでいることが相まって、利便性は非常に高い路線であることに間違いはないでしょう。

東京臨海高速鉄道 70-000系
大崎〜新木場間を結ぶりんかい線は、お台場や天王洲へのアクセス路線

お次は東京の臨海部を走る「東京臨海高速鉄道 りんかい線」。こちらはご存知の方も多いハズ、大崎駅〜新木場駅間を天王洲アイルやお台場(東京テレポート駅)、東京ビックサイト最寄り駅の国際展示場駅などを経由して結んでいます。大崎駅では埼京線と直通運転を行っていますので、新宿、池袋、埼玉方面からのアクセスが非常に良いです。しかしこちらも全線を乗り通すと400円。JRで東京経由で行くと310円とやはり割高となります。
さらに新木場駅ではJR京葉線と接続し、実際に線路が繋がってはいるものの、運賃計算の関係上こちらは直通運転は行っていません。またりんかい線は、「羽田空港アクセス線」の計画の一部ともされており、今後の動向にも注目が寄せられています。

埼玉高速鉄道2000系
埼玉高速鉄道は東京メトロ南北線を介して、東急目黒線の日吉まで直通運転をする。

こちらの高速鉄道は埼玉県を代表する、その名の通り「埼玉高速鉄道線」。東京メトロ南北線の赤羽岩淵駅〜浦和美園駅間を結び、東京メトロ南北線と、南側の直通路線・東急目黒線とも直通運転を行っています。埼玉高速鉄道は川口市、浦和市の鉄道空白地帯を走る路線で、終点浦和美園駅付近を除いては地下路線となっています。こちらは初乗り運賃が210円、乗り通すと14.4kmで480円。これまでの例と同じく割高に設定されているものの、開業以来初乗り運賃の値上げは一切されていません。
今後は浦和美園から先、岩槻や蓮田までの延伸計画があるなど、またどのように発展するのか注目です。

加算運賃が引き下げられた例は?

さて、これまでは高額運賃の事情を話してきました。北総線は値下げを発表しましたが、その他に値下げなどが行われた例があるのでしょうか?・・・答えは、もちろんあります!その代表的な例をご紹介します。

加算運賃が廃止された例

東急田園都市線

開業・開通から加算運賃が設定されていたものの、廃止されて通常の運賃と同一となった例としてあげられるのが、1977年に開通した東急新玉川線(現:東急田園都市線の二子玉川〜渋谷間)で、1997年に廃止となっています。もうひとつが、1979年に開通の小田急多摩線(2005年廃止)。どちらも大手私鉄で、今では混雑率トップクラスとなっている路線。この結果が頷けます。

加算運賃が引き下げられた例

京王相模原線

一方で、現在でも加算運賃が適用されつつも、開業時と比べて価格が引き下げられているケースとしてあげられるのが、京王相模原線(1990年全線開業)。調布〜橋本間を結び、前述の小田急多摩線同様、多摩ニュータウンと都心を結ぶ路線のひとつとなっています。こちらは京王稲田堤〜橋本間で加算運賃が適用されていますが、開業時の最大80円→20円に値下げ。近いうちに建設費の回収も終了することから、数年後には加算運賃撤廃となる予定だそうです。

京急線エアポート急行

もう一つ首都圏で引き下げがあったのが、京急空港線。こちらは京急蒲田〜羽田空港を結ぶ路線。品川駅や横浜駅からの直通列車も設定されており、京急を観光路線から空港アクセス路線へイメージを刷新させた立役者でもあります。こちらは新規区間である天空橋〜羽田空港間で加算運賃の他、空港線内区間で特定運賃が上乗せされていましたが、2019年10月に特定運賃は廃止。加算運賃の値下げも行われ、品川駅〜羽田空港間の運賃は410円→300円に引き下げられました。
また京急空港線は、東急多摩川線との連絡線・蒲蒲線の計画に進展があり、今後の動きも気になるところです。

これらの路線は時代背景、沿線開発の進展や路線事情といったものがうまく重なり、利用者数も増加したことで費用の償却ができたのでしょう。このような成功例から、やはり高額運賃を解決するには、一人でも多くの利用者を増やす。というのが確実な解決方法となるのだと思います。

まとめ

今回はかなり踏み込んだテーマとさせていただきましたが、私自身が当サイトでご紹介した駅の中でも、高額運賃路線に該当するものが存在します。が、実はどれもとても素晴らしい駅ばかりで、行ってみて大好きになった駅ばかりです。特に北総線・印西牧の原駅は商業施設から宅地まで、どこも魅力的なものばかりですし、京成千原線・千葉寺駅も閑静な住宅地でとても住みやすそうな印象を持ちました。

どこも本当に魅力的な街ばかり。えきまえふぁんとしても、利用促進につながるお手伝いができればと思っております。

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