首都圏のグリーン車需要、課金をしてまでなぜ快適を選ぶのか

首都圏のグリーン車需要、課金をしてまでなぜ快適を選ぶのか

コラム
2022.03.01 2023.01.21
EKIMAG

首都圏を走るJR東日本の路線は、1車両に片面4つの扉、側面に沿って並べられたロングシートを基本とした通勤型車両が多くを占めます。一方そんな中で、路線によっては編成の中に一線を画す車両が組み込まれた列車を見かけることがありませんか?それはグリーン車という特別な車両で、おもに東海道線、高崎線、宇都宮線などといった中距離路線で使用されています。別料金でありながらも、特急列車並みの豪華な座席に座れるということもあり、ここ近年増えている都市圏の着席需要にきっちり答えている素晴らしい設備でもあります。そんなグリーン車ですが、今後も増える予定もあるのだとか。その詳細と概要、魅力の理由に迫ります。

グリーン車が連結される路線と今後の予定

グリーン車を連結する車両

まず現在首都圏においてグリーン車が連結されている路線はというと・・・
形式としては上図の4車両、湘南色と呼ばれるオレンジと緑の帯を纏ったE231系、E233系(東海道線、高崎線、宇都宮線、上野東京ライン、湘南新宿ライン)と、当サイトでもご紹介したスカレンジことE235系(横須賀・総武快速線・総武本線・成田線・内房線・外房線など)。紺色帯のE531系(常磐線、上野東京ライン)といった、おもに中距離路線と言われる路線で使用されます。これらの車両は10両・11両の編成に2両(基本4号車と5号車)2階建てのダブルデッカーと呼ばれる車両が連結されています。

実はその歴史は長く、1969年にそれまであった座席の等級制が廃止され、一等車とされていた車両の新たなる呼称として、グリーン車と名付けられました。普通グリーン車としては、1970年代には東海道線、横須賀線には既に連結されていたようで、当時はまだ2階建て車両というものはなく、特急列車並みの設備を施した車両もしくは特急車両を流用ものが使われていました。それが1980年代にもなると、通勤需要が急速に高まり着席が困難になったことから、現在のような2階建て車両が開発され、座席定員の増加を実現したのだそうです。2000年代になると、湘南新宿ラインの開業などで中距離列車の直通が頻繁に行われるようになり、需要も着実に高まってきたことから、宇都宮線、高崎線、常磐線においてもグリーン車を導入。現在の体制となりました。

中央線快速 E233系

今後は中央線快速に導入される予定で、現在10両編成(一部分割6+4両)で運行されていますが、グリーン車を新造の上2両増結し12両(分割編成の6両→8両)編成となります。そのため中央快速線ではホームの延伸工事と一般車両へのトイレ設置工事が進められています。2023年度末の導入を予定していましたが、世界的な半導体不足の影響で、さらに1年程度の延期が見込まれています。ただでさえ運行頻度が高い中央快速線でグリーン車をどう運用するのか、今後もその動向に目が離せません。

普通の車両と何が違うのか、その設備と料金

グリーン車

2階建て構造の外観から、一般的な通勤型車両との違いは一目瞭然ですが、車内は一体どのように違うのかを見ていきましょう。

E235系グリーン車 車内
上段:階上席、下段左:階下席、下段右:平屋席

こちらは最新型のE235系車両のグリーン車車内。転換クロスシートが並ぶ座席は特急列車と変わりませんね。もちろんリクライニング機能も備えています。座席の埋まる傾向としては、まず階上席が席数も多いせいか人が集まります。平屋席は座席数が少なくよりプライベート性が高いので競争率も高いです。筆者はわりかし人気の低い階下席を進んで利用します。(そんな競争しても無駄なので)

E235系グリーン車のコンセント

また最新型のE235系では、全座席にコンセントを搭載し、移動しながらのデバイス充電ができるようになりました。ビジネスユーザーやスマホヘビーユーザーにとっては何とも嬉しいサービスです。

営業キロ事前料金車内料金
平日ホリデー平日ホリデー
50kmまで780円580円1,040円840円
51km以上1,000円800円1,260円1,060円

そして気になるのがその料金。グリーン車の乗車には、乗車運賃にグリーン券料金が別途かかります。上図にも記載していますが、乗車する距離によって料金が変わるのが基本となります。それとはまた別に事前料金や車内料金という記載があります。
事前料金というのは、グリーン車に乗車する前に購入するグリーン券のこと。駅の自動券売機や、ホームのグリーン車停車位置付近にあるSuica専用の券売機で購入できます。一方の車内料金というのは、予めグリーン券を購入せずに乗車した場合のグリーン車料金のこと。グリーン車に乗車するアテンダントに料金を支払います。ご覧いただくとわかる通り、車内料金のほうが、事前料金より200円割高となります。こんなに料金が違うのだったら、断然乗車前に買ったほうがお得ですよね。乗車の際覚えておくと良いでしょう。

料金表をさらによく見ると、平日とホリデーでも料金の違いが・・・!そう、グリーン車は土日祝日、振替休日、年末年始(12月29日~1月3日) に乗車すると安くなるんです。通勤以外にも週末のおでかけでお得に使えるのは嬉しいですよね。また未就学児に関しては料金不要で乗車することができます。

一方注意すべき点は、普通グリーン車は自由席が基本となるので、満席等の理由で着席ができない場合でも乗車にはグリーン券が必要となります。

乗るにもお金がかかる、人はなぜ快適を求めるのか

グリーン券売機

電車での移動をひとつ上の快適性で実現できるグリーン車。JR東日本では元々あったサービスですが、近年では大手私鉄でも別料金の着席サービスを開始したり、その需要は年々高まりつつあります。料金がかかってでもなぜ人は快適を求めるのでしょうか。

東急6000系
東急大井町線では夕時間帯限定で着席サービス「Q SEAT」を展開している

ここからは参考文献があるわけでもなく、単に筆者の経験談から述べさせていただきますがご了承ください。まず筆者がグリーン車を利用しようとする目的は以下の通り。

ちょっとお酒飲みすぎた。。。なんとしてでも座って帰りたい。

筆者は東京〜千葉間をよく利用します。総武快速線を使っても大体40分くらいかかりますが、お酒を飲んだ後に40分の移動は地味に負担がかかります。なるべく体の負担を軽減させるために、グリーン車を利用することもあります。

移動中もPC作業したい。

40分もあれば、ちょっとしたPC作業をするにはちょうど良いので、隙間時間の有効活用といったところですね。

目的地までの乗車時間が長いから、ロングシートでの移動がしんどい。

総武快速線は横須賀線とも直通していますので、例えば千葉から東京を越えて横浜や鎌倉へ行きたい!といったときに、その所要時間は1時間は優に超えます。そうなるとロングシートでの移動は多少なりともキツさは感じると思います。成田エクスプレスを利用するという選択肢もありますが、A特急料金は割高なのでさすがにそこの出費は抑えたいので。。。

こうしてみると快適性はもちろんですが、時間の有効活用やコンディションを考慮した利用ができるというのはとても大きなメリットではないでしょうか。

まとめ

昭和の高度経済成長期から快適な移動空間を提供しつづけ、今なおそのサービスクオリティも向上しつづけるJRのグリーン車。快適空間はもちろんですが、実はこのサービスの裏には、車掌さんやアテンダントさん、折返し駅で座席転換や清掃業務をしてくれる作業員さんたちがいるからこそ、成立するサービスであることは忘れてはいけません。ときたまグリーン車の無賃乗車があったという残念な話を聞くこともありますが、くれぐれもそういった愚かなことは即刻辞めていただきたいです。私は特急列車やグリーン車に料金を支払って乗ること、それはすなわち支えてくださる方々への対価だと思っています。これからもその感謝の気持ちを忘れず、快適で心地よいサービスとして発展していってくれることを心より願っております。

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